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最高裁判所第一小法廷 昭和28年(あ)1087号 決定 1957年12月19日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人井出甲子太郎の上告趣意第一点は、原判決は罪とならない事実について有罪の認定をした違法がある、と主張する。

しかし、刑法一九七条にいう「其職務ニ関シ」とは、当該公務員の職務執行行為ばかりでなく、これと密接な関係のある行為に関する場合をも含むものと解するのが相当である(判例集一一巻三号一一三六頁以下、大審院昭和一九年(れ)四〇六号同年七月二八日判決大審判例集二三巻一五号一四三頁以下参照)。そして、原判決が詳しく説明しているとおり、被告人の本件行為それ自体は、公務員の職務執行行為ということはできないとしても、担当職務の執行と密接な関係のある行為に該当することは、当裁判所においても是認することができる。だから、被告人は、その職務に関して収賄したものであり、原判示は正当である。職務の執行と密接な関係のない単純な斡旋収賄であることを前提として、罪を構成しない事案であると主張する論旨は、原審の事実認定にそわないものであって採ることを得ない。

同第二点は、結局量刑不当の主張に帰し、適法な上告理由とは認めがたい。

よって刑訴四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 真野毅 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 入江俊郎)

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